種田山頭火の俳句50句(その2)

松はみな枝垂れて南無観世音

松風に明け暮れの鐘撞いて

生死の中の雪ふりしきる

木の葉散る歩きつめる

山の奥から繭負うて来た

ほろほろ酔うて木の葉ふる

しぐるるや死なないでゐる

雪がふるふる雪見てをれば

しぐるるやしぐるる山へ歩み入る

れいろうとして水鳥はつるむ

涸れきつた川を渡る

雨の山茶花の散るでもなく

しきりに落ちる大きい葉かな

すつかり枯れて豆となつてゐる

枯山飲むほどの水はありて

それでよろしい落葉を掃く

また逢へた山茶花も咲いてゐる

見すぼらしい影とおもふに木の葉ふる

枝をさしのべてゐる冬木

霜夜の寝床がどこかにあらう

安か安か寒か寒か雪雪

うしろすがたのしぐれてゆくか

鉄鉢の中へも霰

冬雨の石階をのぼるサンタマリア

投げだしてまだ陽のある脚

木の芽草の芽あるきつづける

ふるさとは遠くして木の芽

はや芽吹く樹で啼いてゐる

しづかな道となりどくだみの芽

蕨がもう売られてゐる

ここにおちつき草萌ゆる

今日の道のたんぽぽ咲いた

ぬくい日の まだ食べるものはある

あるけば蕗のとう

ひつそりかんとしてぺんぺん草の花ざかり

すずめをどるやたんぽぽちるや

てふてふうらからおもてへひらひら

何が何やらみんな咲いてゐる

あるけばきんぽうげすはればきんぽうげ

あざみあざやかなあさのあめあがり

ぬれるだけぬれてきたきんぽうげ

かすんでかさなつて山がふるさと

春風の鉢の子一つ

ひさびさもどれば筍によきによき

蓑虫もしづくする春が来たぞな

霽れててふてふ二つとなり三つとなり

春が来た水音の行けるところまで

春寒のをなごやのをなごが一銭持つて出てくれた

分け入つても分け入つても青い山

炎天をいただいて乞ひ歩く

ひとりで蚊にくはれてゐる


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